旅の未知草「芭蕉句碑めぐり」  
  細道を碑撮り馳せるや走馬灯  
  − 「奥の細道」旅中と思える期間に詠まれた作品を中心とした代表的な句碑(青文字;「おくのほそ道」掲載句) −  
   
 
 
海に降る雨や悲しきうき身宿
 
 
文月や六日も常の夜には似す
 
 
荒海や佐渡に横たふ天の川
 
 
薬欄にいつれの花を艸まくら
 
   元禄年間北越路へ旅行せられ「新潟」(出雲崎)に於いて詠われし松尾芭蕉の「泊船集付録」に納められた名句(合祀船江神社の説明)。かつては存疑の部。(新潟県新潟市合祀船江神社)    「おくのほそ道」(越後路)元禄276日、「直江津」での作。曽良は「朝霧に食焼烟立分て」を詠む。この時代、江戸から遠く離れた地、芭蕉はここでも「切れた」ようだ。(新潟県上越市琴平神社)    「おくのほそ道」(越後路)元禄2625日-712日、「越後路」での作。「俳諧伝灯塚」として「支考」(五月雨の夕日や見せて出雲崎)と「盧元坊」(雪に波の花やさそうて出雲崎)の句が並刻。(新潟県出雲崎町妙福寺)    「おくのほそ道」(越後路)元禄278日、「越後高田」の医師「細川春庵亭に一泊した折りに詠んだ句。裏庭の薬草を案内されての挨拶吟。曽良は「馬乗ぬけし高藪の下」を詠む。(新潟県上越市金谷山対米館)  
 
 
曙や霧にうつまくかねの聲
 
 
一つ家に遊女もねたり萩と月
 
 
早稲の香や分け入る右は有磯海
 
 
あかあか
と日はつれなくも秋の風
 
   「おくのほそ道」(越後路)元禄2711日、「能生」の「玉や五郎兵衛」(玉屋)に泊まった芭蕉は名鐘「汐路の鐘」のことを聞き詠んだ句といわれている。かつては存疑の部。(新潟県糸魚川市白山神社)    「おくのほそ道」(市振)元禄2712日、「市振の宿」(桔梗屋)に泊まり妙趣に香る遊女の句を詠んだ。「文月や」「荒海や」「一家に」を連ねて読むと面白い。(新潟県糸魚川市長円寺)    「おくのほそ道」(越中路)元禄2713-14日、「那古の浦」での作。(富山県射水市放生津八幡宮)    「おくのほそ道」(金沢)元禄2715-23日。旧北国街道沿いの「佐潟公園」(新潟市)に同句碑があり「赤塚宿で詠んだ」との異説あり。越後路での心境を詠んだとなれば赤塚は有力かと。(石川県金沢市成学寺)  
  No.12    
  旅人 & 撮影者 福澤三雄(長野県東御市)