日本の原風景 渋海川の瀬替え
2018.10.29(月) 晴/曇/雨
 「千曲川」を撮り続けてきた兄のリクエストで信濃川水系第二の支流「渋海川の瀬替え」(しぶみがわ)探索に姉も参加し行ってきた。前夜にナビ電源系のトラブルが発生、急遽慣れない姉の車で其の都度ナビ設定する慌ただしい旅になった。(これにより、「渋海川源流」ならびに「源流の碑」行きは取り止めになった)
 【星峠の棚田】 新潟県十日町市松之山町
つゆしもの秋の棚田に棚霧るは煙霞に架かる天使の梯子
枕詞;つゆしもの(露霜の) かかる語;秋  棚霧る(たなぎる)・煙霧(えんむ)
 
 
 十日町市を代表する「棚田」で、大小約200枚が魚の鱗まように斜面に広がっている。まるで、古代ローマにみる「円形競技場」のようだ。朝日が染める赤い雲が田毎に写る。ほぼ真横から朝日のスポットライトに照らされる棚田は、選ばれた英雄のように誇らしく凛として光り輝いて見える。雲海に勝るとも劣らない絶景に思わず合掌。
 【渋海川の瀬替え】 新潟県十日町市~長岡市
 「渋海川」は、長野・新潟の県境にある三方岳(標高1130m地点)を源流とし、新潟県十日町市(松之山町・松代町・川西町・小国町・越路町)の東頸城丘陵を北流し長岡市で信濃川に合流する。信濃川水系支流の一級河川で延長71km。上中流域に見られる激しい蛇行は、平野の中を蛇行していたものが周囲の隆起により山間部を穿つようになった(穿入蛇行)と考えられている。谷底での沖積面の発達は悪いうえ、流域は地すべり地帯かつ豪雪地帯でもあり、融雪による崩壊も多く、崩落によって形成された山腹の緩斜面に集落や棚田が散在している。
 【室野集落】 新潟県十日町市松代町
 
 渋海川上中流域は、ひとつ上左画像にみるよう比較的脆い地盤(砂岩・泥岩の第三紀層)であったため、瀬替えを行うには都合の良い地域であった。この後に探索する川底ならびに瀬替え掘削跡では共通した風景が見られる。
 【長命寺】 新潟県十日町市松代町
 度重なる大洪水で大きく蛇行する川、渦巻く濁流は岩を削り川床をえぐり田畑は決壊し危険な状態であった。昭和12年着工の瀬替え工事では、大きく蛇行する流れに直線状に「堀割」をし、流速を緩和するため「堰堤」(右上画像)を築いた。
 
 北越急行ほくほく線「松代駅」南側を流れる渋海川右岸に「長命寺」がある。長命寺前に「前島新田」そして川下側に「五郎兵衛新田」と瀬替田が続く。これより右岸沿いに「小荒戸集落」へ、兄は徒歩で先を行く。
 【小荒戸集落】 新潟県十日町市松代町
 事前のロケハン(グーグルマップのストリートビューならびに航空写真で確認)で、立ち寄り先の一つに挙げた場所である。小荒戸集落入口の渋海川に架かる橋上で徒歩先行している兄は近隣の小母さんと立ち話をしていた。
 
 長命寺からも見えていた「人煙」が山間に広がっていた。「原風景」に「人煙」が加わり最高の絵になった。
しなざかる越を流るる渋海川人煙ただよふ瀬替えの棚田
枕詞;しなざかる(階離る) かかる語;越
 【菅刈集落の風景】 新潟県十日町市松代町
 「菅刈集落」は、渋海川左岸の高台にある。そこから「田沢集落の瀬替え」が見下ろせる(左上画像)ことは、事前調査時のロケハンで確認している。錦鯉1~2尾、「錦鯉の里」(小千谷市)は隣地なので不思議ではない。
 
 「菅刈集落」から国道253号に降りる。さきほど見下ろした「田沢集落の瀬替え」(左上画像の瀬替え新田、右側山陰部)を確認する。蛇行の先端部(右岸湾曲部)を掘削しバイパスを作り瀬替えしたので流路は直線になる。
 【川底の百穴】 新潟県十日町市松代町
 渋海川流域(松之山・松代・川西・小国・越路)には、昭和中期頃、「炭焼き」より手っ取り早いと「亜炭炭鉱」が盛んであった。犬伏炭鉱付近の砂岩層(犬伏層)に無数にポットホール(甌穴)が見られる。
 【昭和の青の洞門(雪中隧道)】 新潟県十日町市松代町
 
 豪雪地帯における徒歩による移動は、体力を要求されると共に、山間部の区間によっては、雪崩や吹雪に巻き込まれる危険性があり、地元住民でも遭難死する例が見られた。雪中隧道は、こうした山間部の危険箇所をショートカットする目的で造られた。
 【犬伏の瀬替え】 新潟県十日町市松代町
 「犬伏の瀬替え」は、短いバイパスで広い瀬替田を生み出した典型的な江戸後期の新田開拓工事。3枚のパノラマ撮影で概略説明すると、右手に見える建物(割烹そば処「松芋/まつお」;十日町市犬伏/旧松代町犬伏)の奥まで渋海川が流れ、中央の丘陵を左奥から手前を通り建物の先から右へと流れていた。その短い頸部をバイバス工事をした訳だ。小画像左が瀬替え工事部、中央は現在の用水路で奥の右手丘陵より流れ落ち瀬替田の両側に流れ下る。
 小画像中央は全体図、右画像はグーグルマップの航空写真、いずれもクリックで拡大する。
 【室島集落の風景】 新潟県十日町市川西町
 
 「豪雪地帯」を流れる渋海川に面した山肌に「雪崩予防柵」が施されていた。民家の方にお話を聞いたところ、かつて雪崩が川を堰き止め川縁の家で床上浸水するほどの雪・水害が起き、「雪崩予防柵」工事がされたとか。
 【孟地の棚田】 新潟県十日町市川西町
 国道403号沿いにある「中子の棚田」を撮ろうと思っていたが、2.2km程手前(孟地地区)の崖縁(道幅が狭く工事中)から見下ろす棚田が気になり撮った。これに満足し、肝心の「中子の棚田」は見過ごしてしまった。
秋來ぬと眼下流るる渋海川ひとへふたへと棚田あやなす
枕詞;あききぬと(秋來ぬと) かかる語;目→眼
 【小脇の瀬替え】 新潟県十日町市川西町
 「小脇の瀬替え」は、蛇行頸部を掘割し瀬替えを行ったことが一目瞭然、江戸後期の開拓新田。(パノラマ画像)
 【中仙田にみる地層】 新潟県十日町市川西町
 
 褶曲谷とは、地層の側面から大きな力がかかり、地層が曲がりくねるように変形する現象のことで、日本海東部沿岸によく見られる。仙田地区は標高150~500mの間で沢と山が連続し、起伏に富んだ地形が特徴である。
 【道の駅瀬替えの里せんだ】 新潟県十日町市川西町
 道幅の狭い国道403号から道幅の広い国道252号に突き当たる。左折し渋海川を渡った右手(渋海川左岸)に道の駅がある。橋上流に「中仙田の瀬替田」がある。
 兄が「瀬替え」について事前に電話で尋ねた道の駅、駅名に「瀬替え」と付け、観光ポスターまで貼ってあるのに全く答えられなかったとか・・・・私の「芭蕉の句碑撮り」でも同様のことがあった。自分たちの立場を認識し、一応の説明ぐらい出来るようにしておいて欲しいものだ。
 【諏訪神社】 新潟県十日町市川西町
 「瀬替え」に関わる唯一の遺構(村人が開田する際の安全を祈ったと伝わる石仏が2・3体祀られている)が「諏訪神社」境内に残っているとの情報で立ち寄ってみた。場所の確認に近くの郵便局を尋ねると“総出”で対応して下さった。また、参道入口の御主人に伺うと「聞いてない」という。
 【三桶集落の風景】 新潟県長岡市小国町
 小国町原(三桶の隣りが苔野島、その先が原)は「小国和紙」(原料;楮)の産地、集落を撮影した橋の欄干に「紙すき」(手漉き和紙)の鋳物板が埋め込まれていた。
 【苔野島の瀬替え】 新潟県長岡市小国町
 
ゆくかはの過ぎたる里の落子は瀬替えでつくる黄金の棚田
枕詞;ゆくかはの(行く川の) かかる語;過ぎ
 「苔野島瀬替え」は、江戸中期享保20年(1735)。当時の越後長岡藩は118千石余(第5代藩主牧野忠周公)
 【JR信越線渋海川鉄橋】 新潟県長岡市越路町
 「JR信越線塚山駅発12:28、1時間に1本撮影予定の列車(1334M)、撮影地着12:19・・・・何時もながらの正確な行動に喝采! 翌言えば晴れてくれ~(12時以降雨という予報通り本降りになった)
 【雪国の商店街】 新潟県十日町市
 最終地点(12:50)は、長岡市の「松籟閣」(朝日酒造)で「久保田」を3本購入し、1本を兄の土産に。昼食は・・・・営業中のお店が見つからなく津南まで来てしまった。

121日から1227日まで地元郵便局のポスタルギャラリーで写真展を予定

     Midi 里の小さい秋みつけた