オオルリシジミの累代飼育2019年度)
 本レポートの複製・転載を禁ずる
著;蝶狂人(東御市オオルリシジミを守る会)
 オオルリシジミは、東御市の天然記念物に指定され保護されている。平成23年より「オオルリシジミを守る会」の「観察部会」に属し保護活動に携わってきた。平成28年から「累代飼育部会」にも属し、多面的に保護活動をすることになった。尚、平成28年度から副会長に任命された。
 温暖化の影響で自然発生が年々早まっている。令和元年度の観察会は昨年と同時期の519日(日)に開催することが425日の総会で決まった。
Ⅰ、累代飼育4年目の課題 ('19.04.27)
 累代飼育3年度の成果は24個(前16個+補充10個、前々27個)、これとは別に「補充用」として総会で20個が配給された。従って、手元には「43個」の蛹がある。羽化準備と点検をしたところ、昨年の夏頃と推察するが、1個の蛹から羽化したオスの死骸が見つかった。従って、飼育は43個よりスタートになる。
 
前年度より引継課題の確認と追加
 ①蛹の管理→夏期の環境/乾燥
ならびに羽化に注意する
 ②羽化・交尾→涼しい環境で吸水・吸蜜を充分に摂らせる
 ③採卵→タイミングと無精卵・変形卵を区別し孵化率向上のノウハウを確立する
 ④若齢幼虫の管理→員数チェックと清掃時紛失
ならびに逃げ出しをに注意する
 ⑤蛹化
50個を目標にする
Ⅱ、羽化待機('19.05.07)
 過去の羽化は、2016年(5/12-18)、2017年(5/12-23)、2018年(5/18-26)であった。4/27に縁の下の越冬ケージより室内に移動させた蛹をテラスに吊り下げた羽化ケージに移した。
 
 
 左画像上は昨年蛹化した23個、下は補充支給された20個である。
 
 
(背)   (脇)
 
(腹)   (腹頭)
Ⅲ、羽化 ('19.05.24)
 累代飼育の羽化は、昨年5/12、一昨年5/13。フィールド発生は早く(5/8-9)八重原台地ではピークを迎えているようだ。そして、御牧原台地でも数日前には発生(5/138頭の♂を確認)、我が家の卵は全く素振りも見せない。
 
 週末の出張に翌週の白内障手術を控え、手の抜けない飼育行程、どうしたものか思案にくれる。最悪は、全てを自然に任せるか・・・・出張前には手筈を整えたい。
 
 今夜は出張だよ!留守中に羽化しても良いように飼育ケージ内の体勢を整える。ほら・・・・みなさい!あなたたちの世代のお母さんが「どうしたのよ」とお目見えだよ!
Ⅲ、羽化 ('19.05.25) AM 7:20~7:24
Ⅳ、交尾・採卵準備 ('18.05.25
 
 今年は「新たなトライ」として、交尾後に移していた「採卵ケージ」に、「交尾前の性熟中の♂」(5/23-24分)を先行で移した。こちらのケージには2頭づつ2ケージ。右側をNo.3、左側をNo.4とする。
 
5/26No.4の♂x1死亡、双方に♂x1各々に追加移動。暑かったためか?午前に簾を天井に張る。
 
5/273日連続30℃超え、暑さの為死亡目立つ、今後の補充はNo.1No.2で行う。
 
 また、こちらのケージには、3頭づつ2ケージ。左側をNo.1、右側をNo.2とする。ケージにはNo.表示あり。
 
5/26No.2x1死亡、No.1に♂x2No.2に♂x3を補充し、双方に♀x1を入れる。
 
5/27No.1の♂x3死亡個体除去、補充♂x2、♀x3No.2に補充♂x1、♀x3
 
5/28;補充No.1に♂x1、♀x2No2に♀x2
 5/29;補充No.1に♀x1No.2に♀x3
 何組かの交尾を確認出来たものの、その数は未詳。最終的な♂♀比率は63:37とオスが多かったものの、最終の♀が羽化するまで健康体を保たさせることが出来なかった。(来年度の課題)
         
    羽化データ    
           
                                 
                               
                               
                           
                         
           
         
       
       
       
     
    5.23 5.24 5.25 5.26 5.27 5.28 5.29 まとめ
自前     2    7   3   1         13 57% 23/23
              1   2   3   4 10 43%
支給 4 6 4   14 70% 20/20
1 4 1   6 30%
計/累計 4/4 8/12 11/23 5/28 7/35 4/39 4/43 ♂:♀=63:37 43/43
Ⅴ、採卵 5.28) 採卵数;127
 
 「飼育ケージ」6個に採卵127個を入れた。No.113個、No.221個、No.321個、No.423個、No.5は分けられなくNo.5a+No.5b44個に分けた。2016年;200個、2017年;260個、2018年;114
 
 元気なメスが10頭程いたので「開放」してやった。羽化してから初めての飲食に貪り着いていた。
Ⅵ、飼育 採卵数127
   明日は丸一日留守にするので、孵化した場合に備え、乾燥防止も兼ねクララの天房を被せておくことにした。
 採卵ケージ(メイン)エリア、クララの穂先が前述のメイガで全滅状態、餌にもならない。そのクララに「逃げ出したメス」(多分)が数日前から産卵をしている。僅かでも「採卵」
 
 員数確認は「TG-4」(顕微鏡拡大モード)で行ったので鮮明には写っていない。(5.28
Ⅶ、孵化 6/7 孵化確認
 
 飼育ケージ No.1No.3No.5で孵化を確認、卵が多い穂先の No.5b より No.5c を追加ケージに分割移動する。
 
6/9 幼虫確認、No.1=7No.2=0No.3=5No.4=2No.5a=5No.5b=0No.5c=2、総計21疋。近々に、幼虫の取り出しを行いたい。
Ⅷ、飼育開始 6/9 取り分け幼虫数57
 7個の飼育ケージに65疋を入れる。No.1=9疋、No.2=9疋、No.3=10疋、No.4=9疋、No.5=10疋、No.6=10疋、No.7=8疋、継続観察は1ケージにまとるた。昨年も、そうであったように「ルリシジミ」が混じっている可能性もあろう。特にNo.7は怪しいものも含まれるだろうが、終齢幼虫の手前になれば判明する。(2019.6.9) 
Ⅷ、飼育観察 6/11取り分け5疋 No.7+5=13疋、総数70でまとめる。(2019.6.11
 5疋中3疋を掲載する。昨年の経験によけば、この幼虫は「ルリシジミ」である可能性は極めて高い。今後の餌やり段階で区分けをしていこうと思う。現在の70疋より50疋以上がオオルリシジミであることを願う。ルリシジミが混入する要因は、採卵後に孵化に備えてのクララやりで農道のクララを用いたことにある。卵が付いているか注意深くチェックし、取り除くことが肝要であろう。
Ⅷ、異種混入 6/16
 
オオルリシジミ   ルリシジミではないかと誤認
 古い餌を取り除き、幼虫のチェックをした。結論からいうと「孵化」したものの殆どは「ルシジミ」、その前から「ルリシジミ」と推察できる幼虫が混入していた。6/9 時点で 70 疋、6/16 では 100 疋になった。ざっくり言ってオオルリシジミの幼虫は 40~50 疋と推察する。(結果的には誤認)
Ⅷ、飼育ケージの大掃除 6/27
 飼育ケージ番号順に員数変化、No.1 6/9=9、6/16=9、6/27=9 No.2 6/9=9、6/16=12、6/27=16 No.3 6/9=11、6/16=20、6/27=21 No.4 6/9=9、6/16=12、6/27=14 No.5 6/9=10、6/16=14、6/27=17 No.6 6/9=10、6/16=22、6/27=16 No.7 6/9=13、6/16=1、6/27=15 合計 6/9=70、6/16=100、6/27=108
 飼育ケージの大掃除と員数チェック、だいぶ大きく(そろそろ4齢になるものも)なり目視で十分数えられる。
No.1 = 9、 No.2 = 17 No.3 =22 No.4 =14 No.5 =19 No.6 =16 No.7 =12 合計 = 1096.30
Ⅸ、蛹化採取(蛹化始まる;7.4
7.5 No.1=3No.2=3No.3=2No.4=1No.5=1合計=10/10

7.6 No.1=0/3No.2=3/6No.3=2/4No.4=2/3No.5=0/1
No.6=0/1No.7=0/1合計=9/19
 異種;
No.2=1破棄 不足;No.1=2 幼虫;No.1=4No.2=10No.3=18No.4=11No.5=18No.6=15 No.7=13 合計=89

7.7 No.1=3/6No.2=7/13No.3=10/14No.4=5/8No.5=6/7No.6=2/3No.7=10/11合計=43/62
 
幼虫;No.1=1No.2=3No.3=8No.4=6No.5=12No.6=13No.7=3 合計=46
 ルリシジミの大量混入で、オオルリシジミは
40~50と推察していた。一応、最少予想数は確保できた。
 この時点で、
201626個、201716個、201824個を超えた。累代飼育での「目標50個」に到達。

7.8 No.1=4/7No.2=8/14No.3=6/20No.4=3/11No.5=7/14
No.6=8/11No.7=10/11合計=27/89
 幼虫;
No.1=0No.2=2No.3=2No.4=3No.5=5No.6=5No.7=2 合計=19
 異種;半数以上がヒメシジミと思っていたが、略オオルリシジミであったことになる。この分だと
100になる。

7.9 No.1=0/7No.2=2/16No.3=0/20No.4=0/11No.5=2/16No.6=2/13No.7=1/12合計=7/96
 幼虫;
No.1=0No.2=0No.3=2No.4=3No.5=3No.6=3No.7=1 合計=12
 最高;
100に向けカウントダウン。

7.10 No.1=0/7No.2=0/16No.3=0/20No.4=1/12No.5=1/17
No.6=1/14No.7=0/12合計=3/99
 幼虫;
No.1=0No.2=0No.3=2No.4=2No.5=2No.6=2No.7=1 合計=9

7.11 No.1=0/7No.2=0/16No.3=0/22No.4=1/13No.5=2/18No.6=2/16No.7=0/12合計=7/106
 幼虫;
No.1=0No.2=0No.3=0No.4=1No.5=0No.6=0No.7=1 合計=2

7.12 No.1=0/7No.2=0/16No.3=0/22No.4=2/15No.5=2/18、No.6=2/16No.7=1/13合計=1/108

◎総括
 羽化;
5/23-29 ♂×27+♀×16 合計;43頭(前年23、支給20
 採卵;
5/28   127個(100
 孵化;
6/7-16  109個(86/100
 蛹化;
7/5-12  108個(85/99) 他にルリシジミ1
 食草;クララを3回採集する
 蛹(
43)→羽化(♂:♀=27:16)♀×16→採卵(127)→孵化(108)→蛹化(108
 期間;羽化(6)採卵()
 蛹化推移は、
271623108個と4年目で規定30個を大幅にクリアできた。
※成果
 蛹化の開始から終了まで
8
 採卵;
127個(100)、孵化;108個(85/100) 蛹化; 108個(84/99
 考察;減少率の改善、飼育ケージからの幼虫の逃げ出し、誤廃棄が無くなったことかと考えられる。