南蔵王 ; 痛恨の尾根歩き

− 2000.9.30 (土) 晴れ −

 蔵王連峰に蔵王と名のつく山はありません。北は双耳峰の雁戸山(1485m)から、南はピラミダルな不忘山(1584m)まで、南北約25kmに渡る奥羽山脈上の連峰です。
 代表的な登山コースとしては、北蔵王縦走コース(雁戸山・熊野岳)、中央蔵王コース(熊野岳・刈田岳)、南蔵王縦走コース(屏風岳・不忘山)があります。

 蔵王の広大さに魅せられ、8月24日と9月22日の南蔵王、9月20日の中央蔵王、それに今回を含め一ヶ月余りで4回目の登山になります。南蔵王縦走コースの登山口に9時に着きました。コースは「秋の南蔵王尾根歩き」(前号)と同じです。

 昨年7月25日の太白山(321m;仙台市)を皮切りに、14ケ月で40の山に延べ79回登りました。ベテランとは言えませんが、それなりに馴れてきました。今、考えてみれば、最も危ない時期だったかも知れません。
 杉ガ峰(1745m)から屏風岳(1817m)の主稜に広がる早めの紅葉を眺め芝草平(1652m)の池塘や高山植物を撮影し、屏風岳(1817m)に向かいます。芝草平から屏風岳にかけ、左の写真のように時折濃い霧が流れていました。
芝草平に流れる霧(杉ガ峰より)
芝草平に点在する池塘 芝草平に咲く花

 屏風岳に向かう登山道は、深い溝状になっています。一昨日の雨で滑りやすくなっていました。後烏帽子岳(1681m)への道を左に分けた地点で、溝の底に足を滑らせ不覚にも右足首の骨折を負ってしまいました。左手に持ったデジカメを壊すまいと、滑った際の不安定な体勢を立て直すことができませんでした。10時30分前後の出来事でした。
 明日から天気が崩れるとの予報もあり登山者の数は多く、幸運にも山形県警酒田署管内の交番所長さんが通りかかり、救助ヘリコプターの出動を要請してくださいました。腫れと痛みが増す右足首を押さえ、早めの昼食をとり救助ヘリの到着を待つことにしました。
 霧も晴れ蔵王連峰が見渡せたとき、宮城県の防災ヘリコプターが屏風岳を西側から回り込むように爆音を響かせ飛んできました。上空には風が吹いているのかしばらくホバリング、やがて救助隊員2名がロープで降りてきました。
 山岳遭難者を運ぶ袋状担架に包まれ一気にヘリまで引き上げられました。後日の同僚話ですが、まるで仲間の遭難死体を見送るような思いがしたとか・・・・
生まれて初搭乗のヘリですが、振動が強く予想以上に乗り心地の悪いものでした。救助隊員の計らいで、担架から身を起こし上空からの景色を眺めるよう薦められました。左眼下に8回登った青麻山(800m)を上空から眺め感動で痛みも忘れました。
 白石市の白石川河川公園までほんのわずか、急降下による気圧変化で耳が裂けるくらい痛く骨折の痛みも忘れるほどです。待機していた救急車(これも初乗車)で市内の緊急病院に搬送、レントゲン写真を撮り2ケ所の骨折であると診断されました。
応急処置が終えたのは12時少し前です。同僚が私のリックを背負い直ちに下山しその足で病院に向かい着いたのは15時30分でした。
 無線連絡をしてくださった仙台市在住の方、山形県警の方、緊急隊員の方、誠にありがとうございました。その暖かい心遣いに深く感謝を申し上げます。