俳句を添えた蝶狂人物語
- 俳句で綴る2016年のバタフライガーデン“1月編” -
 「旅の未知草」・・・・このところずっぽり嵌っているのが「碑撮り旅」。ホームページの最上段に「二つ折りの手紙“Buttrfly”が花の番地“Cotage garden by tyokyojin”を捜している」という“ジュール・ルナールの詩”を捩った一節を付している。「おくのほそ道」の「序文」に何処か通じるものがある。(季語;下線 切れ字;赤字
 
【平成28年1月1日】歳旦吟 No.001
冬枯れや改造残す四季の庭
ふゆがれ かいぞうのこす しきのにわ
四季のにわ霜くずれさく夜明かな(初案)→霜くずれ花より先に飾る庭(改案)→枯野より折々の蝶集くかな(成案)
庭先や寒さも緩み霜くずれ→冬枯れや改造残す庭仕事→雪融け待つや枯山水
 折々の蝶が集まる四季の庭(バタフライガーデン)は冬枯れし、開けた小径に霜柱が咲いている。借景なる浅間山系の稜線は、暖冬ゆえ新年を迎えても地肌色のまま。
 
 
【平成28年1月3日】正月の三日 No.002
暖冬やひょんな凍蝶松の内
だんとう ひょんないてちょう まつのうち
夢うつつ目覚に早し冬の蝶(初案)→冬の蝶目覚めに早く二度寝しや(改案)→凍蝶や目覚めに早し四季の庭(成案)
風花が舞う庭先やひょんな蝶→
 庭に植えたコニファーの垣根をスジボソヤマキチョウが通り越す。暖冬(4/上の陽気)と言えど、この時期に越冬蝶が舞うのは早過ぎる。
 
 
【平成28年1月4日 】自画讃句 No.003
八十九我家に集く蝶種なり
はちじゅうく わがやにすだく ちょうしゅなり
秋四度すだくや蝶しゅ八十九(初案)→四年越し八十九とは蝶種かな(改案)
あきよたび すだくちょうしゅ はちじゅうく  よねんこし はちじゅうくとは ちょうしゅかな 
 終の棲家に移り住み5年、本格的なバタフライガーデン造りも4年経った。この間に観察出来た蝶の数は89種になった。ちなみに、東信に生息する数は129種、信州に生息する数は147種と日本一を誇る。
【平成28年1月5日】バタフライガーデンの造園三大目標 三句一連の構成 No.004-006
 何れ年老いて「蝶を追い求めての里山歩き」は苦痛になるだろう。そのとき突如、「生甲斐」を失うのは辛い。そこで、考えた戦略が「蝶が集く庭造り」であった。この4年で観察出来た89種の9割が「通りすがりの旅人」なのだ。バタフライガーデン造りには戦略が必要、一般の「ガーデニング」とは「コンセプト」に違いがある。
オオルリシジミ(大瑠璃小灰蝶) アサギマダラ(浅葱斑) ミヤマシジミ(深山小灰蝶)
 「オオルリシジミが棲む家」は、連歌風に詠んでみた。
大瑠璃は蝶棲むにわの象徴かな
オオルリは ちょうすむにわの しょうちょうかな
大瑠璃小灰蝶市の宝かな観察は水無月遅く皐月かな
オオルリシジミ しのたからかな かんさつは みなづきおそく さつきかな
 蝶狂人(ハンドルネーム)として、終の棲家を「オオルリシジミが棲む家」(環境省・長野県;絶滅危惧Ⅰ類指定、東御市;天然記念物・市の蝶に指定)にしたいし実現出来れば「至福の家」になる。これは達成の域にある。
 「アサギマダラの“渡り”の給蜜処」・・・・フジバカマを植えた翌年(2013)に達成
藤ばかま渡る浅葱の枝折かな
フジバカマ わたるアサギの しおりかな
浅葱斑ワルツ踊れや藤ばかま(初案)→秋空に舞い上がるやアサギマダラ(改案)
アサギマダラ ワルツおどれフジバカマ  あきぞらに まいあがる アサギマダラ 
 アサギマダラは、晩夏から初秋にかけ越冬地に向かってキク科のフジバカマで吸蜜しながら集団南下(渡り)する。某の説では何km~何10km先のフジバカマを探し出せるという。アサギマダラの観劇(ワルツ)会は「蝶の庭」最大イベントになっている。
 三番目は「絶滅危惧種の駈込寺」・・・・ミヤマシジミとヒメシジミを意識したもので達成は道半ば
珍しや深山放すな駒つなぎ
めずらし ミヤマはなすな コマツナギ
哀れやなミヤマ離れぬ駒つなぎ(初案)→暖色に涼しき色は深山かな(改案)
あわれやな ミヤマはなれコマツナギ  だんしょくに すずしきいろは ミヤマかな
 ミヤマシジミは、環境省は絶滅危惧Ⅰ類、長野県は準絶滅危惧に指定、当地では絶滅寸前。見通しの良い路傍にマメ科のコマツナギを植え駈込寺環境を整備中(台地最大の群生地に育成)。
【平成28年1月14日】てずくな(東信の一部地方の方言) No.007
昼寝する我が耳元に集く蝶
ひるねする わがみみもと すだくちょう
耳元でそっと囁く蝶々かな(初案)→昼寝して蝶の夢見るベンチかな(改案)
みみもとで そっとささやく ちょうちょかな  ひるねして ちょうのゆめみる ベンチかな 
 
 暖冬故、思い立ったらすぐに手が付けられる。農道奥の貯水槽脇に放られた鉄骨の再利用、そうだバタフライガーデン(蝶の苑、花の庭、四季の庭)にベンチを設置したら楽しみ方が一つ増える。
 夢は・・・・
 自作ベンチで昼寝していると、蝶が舞い寄り「おっちゃん、起きなよ!」と耳元で囁く・・・・。
 
 
【平成28年1月15日】写真集の巻頭句(候補) No.008
四季のにわ行交う影は蝶々かな
しきのにわ ゆきかうかげは ちょうちょかな
その蝶に俳句添えよう四季の庭(初案)→蝶のにわ先ず発句より撮影かな(改案)
そのちょう
はいくそえよう しきのにわ     ちょうのにわ まずほっくより さつえいかな   
 俳諧師が集まれば「歌仙」を巻く、蝶屋(蝶を趣味にする人たちの総称、狭くは採集者を指す)が集まれば「蝶談義」に尽きる。
 「蝶屋談義」で情報交換を通じ「人と人の距離」を短縮する。
 芭蕉が言うところの「旅の体裁」(蝶の体裁)を借りて「邂逅と別離」(出逢いの場=バタフライガーデン)・・・・に通じる。
  適当な写真なし
 
【平成28年1月16日】鹽竈神社(奥の細道)を参詣して No.009
払暁に雪靴ひゞく社叢かな
ふつぎょうに ゆきぐつひびく しゃそうかな
 「夜明け」前の鹽竈神社、表参道を登る参拝者の足音、「冬靴/雪靴」に施された「滑り止めの金具が発する金属音」、202段の石段を力強く踏みしめる高い音が聞こえる。静まりかえる「鎮守の森」に浸み込んで行く。
 
【平成28年1月18日】次回の写真展を考え 二句一連の構成 No.010-011
 「バタフライガーデンに集う蝶たち」という写真展を、オフシーズンの「晩秋」もしくは「早春」に開催している。昨年は「旅の未知草」を主題に「碑撮り旅奥の細道弥生展」を3月に開催した。次のタイトルは「俳句を蝶に添え、蝶と俳句のコラボ」だが、それぞれのブースタイトルを考えてみた。
四季のにわ蝶々や花の師走展
ちょうのにわ ちょうちょはなの しわすてん
おもしろや蝶や俳句の師走展(改案)
おもしろ ちょうやはいくの しわすてん
行く秋や蝶々や句碑のコラボ展
ゆくあき ちょうちょやくひの コラボてん
歌まくら奥の細道碑撮り旅(初案)→訪ね行け奥の細道うた枕(改案)
うたまくら おくのほそみち ひとりたび  たずねゆ おくのほそみち うたまくら  
 国指定の「おくのほそ道の風景地」や碑撮り旅「市振以降」の句碑、芭蕉・曾良・ゆかりの俳諧師の俳句を添え厳選した全途次について併設展示する予定です。
 
 手持ちの「A3ノビ・ワイド四切」の額縁は各30個ある。全部使っても足りない。今迄の写真展は「兄・姉」との三人展であった。別企画で開催することも視野にいれ検討中だ。
【平成28年1月21日】大寒 初めての雪景色に寒波 No.012
雪げしき蝶も寝つくや四季の庭
ゆきげしき ちょうもねつく しきのにわ
雪ぶとん蛹寝つくや蝶の庭(初案)→寝ぐせいう蝶のおさなご冬越しかな(改案)
 
 暖冬から一変して大雪と冷え込み、そんな年の蝶の発生は平年に比べて大きく異なる。温暖化の現れなのか近年における蝶の発生は全く読めない。昨シーズンの蝶種・数とも散々たるものだった。
 
 降雪3日目の20日に積雪合計32cm(一昨年の1m超えにはほど遠い)、翌週28日に鼻先痛む氷点下-18cm(当地に住んで最低気温になった)、暖冬であることには違いなく気象庁も取り消す様子はなく今後の記録更新もなさそうだ?(自然現象なので・・・・分からないね)
 
【平成28年1月23日】 No.013
腰低く蝶迎るやご神木
こしひくく ちょうむかえる ごしんぼく
藤うつぎ蝶も驚く変化かな(初案)→藤うつぎ数多のちょうを魅るかな(改案)
フジウツギ ちょうもおどろく へんげ
かな  フジウツギ あまたのちょうを みせるかな
 東棟の東壁際に植えたご神木の“イエローマジック”、アゲハ・タテハ・キバネセセリ・アオバセセリ等が好んで吸蜜訪花した。昨シーズンと比べ剪定後は丈が低く、蝶の庭の奥まで見渡せ多くの蝶が訪花するだろう。
 
 バタフライ・ブッシュというだけあって蝶が集まるブッドレア、本種は5種中で最も丈が高く5mまで伸びる。昨年末にバッサリと半分以下の背丈に切り込んだ。根元周りに苔を張り詰めたので和風造りになった。灯籠風LEDライトを付けてみたくなった。(左は昨秋、右は年明けの写真)
 
【平成28年1月25日】今年こそ撮りたい三つの蝶 三句一連の構成 No.014-016
 何れ年老いて「蝶を追い求めての里山歩き」は苦痛になる。そのとき突如、「生甲斐」を失うのは避けたい。そこで「押せば遠のき引けは近寄る」戦略が「蝶が集う苑造り」であった。89種、9割が通りすがりの旅人なのだ。
キベリタテハ(黄縁蛺) ミスジチョウ(三筋蝶) スミナガシ(墨流)
早春白縁みたし里の山
そうしゅんや シロベリみたし さとのやま
 山地性のタテハチョウ科のキベリタテハ、ダケカンバやシラカバの樹液に集まる。湯の丸や蓼科山麓で見掛ける。我が家がある台地に生息しないが、越冬明けのシロベリ(俗称白縁)は家の周囲でしばしば見掛ける。
若かえで何処や我を三筋蝶
わかカエデ いずこわれを ミスジチョウ
 千曲川の崖縁にミスジチョウが生息するとの便りはあるも、家の周囲では未だに見掛けていない。いても不思議でない蝶ゆえ、今年こそ突き止めたくカエデ頼りに探してみよう。
夏山や青羽いじめの墨ながし
なつやま アオバいじめの スミナガシ
 宮城在住の6月初旬、毎年のように青麻山に登った。山頂で見るアオバセセリ(青羽挵)とスミナガシの乱舞に魅せられる。我が家にアオバセセリは毎年同じ時期に飛来する。乱舞の舞台を探せばスミナガシに逢えるだろう。
 
  1   2   3   4   5   6   7   8   9   10   11   12
句数 16   24                                        
累計 16   40                                        
- 合掌 -